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日本に学ぶ食の知恵「山を育て、野を耕し、海で貯える」 vol.06 限界集落 その4

ぜんまいの味、全開! 今回は、限界集落で見つけた日本のスローフードをご紹介します。

高知県西部、仁淀川上流に位置する沢渡地区。美味しいお茶の産地です。
取材に訪れた5月3日、Vol.3でもご紹介した限界集落に輝く若き星、岸本さんは元気に新茶を摘み、そして加工していました。この日より前3日間は雨続きで、茶摘みが出来なかったため、当日は沢山の新芽を摘まねばならずの大忙し。
そんな中、「お昼ご飯をご一緒に」と自宅に招いてくれたときに出してもらったものは、素朴にして鋭利な味の山菜料理でした。
その献立は、お酢を使わないばら寿司にたらの芽と椎茸の天ぷら。いたどり、切り干し大根、そしてぜんまいの煮つけという春のスローフーズたち。
当日、岸本さんのお宅に入った瞬間、「あれ?黒茶の香りがする・・・」と思っていたのですが、その正体が後にわかることとなる献立でした。
新茶の沢渡地区
岸本さんのおばあさんの名前はツユコ。通称ツユちゃん。その御年はさておき、朝露のようなきらめきは今でも失せない素敵なお方です。
ツユちゃんにかかれば山菜も一級素材へと早変わり。中でも私が最も気に入ったのは、ぜんまいでした。
ツユちゃんのぜんまい。今までに食べたことのあるぜんまいとは全く違う旨さでした。
ぜんまいとは、シダ科の植物で、春にニョキッと出てくる新芽が食用となります。その名前の由来は、銭に似ているので銭巻きからだとか・・・。芽がでて放っておけば普通のシダに成長するところを、銭(価値)になるよう手を施すのだから、その語源も納得が出来ます。
ツユちゃんのぜんまい作りは、野山に出てそれを摘み取るところからスタートです。
早朝、お茶畑の周りに出てきたぜんまいの中から、来年のための芽を残しつつ一本ずつ摘み取り、午前中には一回目の天日干し。その後、お茶を揉むための「揉捻機」(じゅうねんき)という機械にかけて柔らかく繊維をほぐします。この作業を合計2度繰り返してから、乾燥機へ。長年の経験で「このくらい」という絶妙の乾燥具合で取り出されたら出来上がりです。
その姿はほのかに赤い黒茶色。鈍く光る表面はまるで数千度の炎で鍛錬されつつある鋼(はがね)のよう。表面から出る香りは、温められては冷やされながら揉まれるために若干の発酵を伴うために、山の野菜独特の酸味を伴います。これが後発酵茶である黒茶とよく似ていた理由のようでした。
「さぁ食べましょう」と思えば、しっかり水戻しをして、若干の油とともに煮付けます。
「良いぜんまいとは、たっぷりの汁を吸いこんでもシャキシャキしているもの」だとか。
事実、いただいたぜんまいは、かつて口にしたどのぜんまいより煮汁を吸い込んで太く、そして口の中でキュッキュと踊ります。 それはまるで太くて美味しいパスタのよう・・・。

限界集落とは65歳以上の方々が人口の50パーセント以上という過疎地域。そこに新たな希望をたぎらせて地域のために働く岸本さんは、その若い血潮で新たな産業を湧き起こすだけではなく、おばあさんから尊い食の伝統を受け継ぐ役割も背負っているようです。

頑張れ!岸本さん。
ぜんまいの煮つけ
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