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最注目「今月の逸品」柳宗理のスプーン

もの作りの原点。

今回はあの有名な柳宗理のスプーンを取り上げます。

セレクトショップなどでよく見かけるこのスプーンは柳宗理さんがデザインしたものというのはよく知られています。私も昔から長く愛用しており、デザインされていないようでいて使ってみるとなるほど使い勝手が良く、毎日のように使用している人も数多くいるはずです。ただし、柳宗理さんがデザインする上で大切にしていた「民藝」という思想を知っている人は多くはないと思います。MUJIの新しい取組み、「Found MUJI」にも大きな影響を与えている「民藝」とは、大正末期、思想家の柳宗悦が、それまで美の見地からはまったく見向きもされていなかった民衆の作る日用雑器・雑貨に新しい言葉を与え、それに価値付けをした、それが「民藝」です。名もない民衆の手仕事によって量産される日常的な工芸品~それにこそ本当の美がある、と。

柳宗悦の「民藝」の思想を大きく広めたともされる宗悦の子、プロダクトデザイナーの柳宗理さんは、ある日訪れたイームズ宅で見た砂糖入れとして使われていた蒸発皿に対してこう言っています。「この蒸発皿はデザイナーが考えたものではありませんし、陶器作家が作りだしたものでもありません、ただ実験用に、より使い易くということで、長い間に自然と浄化されて出来上がったと言えましょう。これをアノニマス・デザイン(自然に生れた無意識の美)と言うのです。今日の日用品は殆ど意識的にデザインされていて趣味的な匂いがするのが多いのですが、この皿は人間のあくの嫌らしさは微塵もなく、素晴らしくも純粋な、清楚な姿を現していると言えるでしょう。民藝の言う不二の美、絶対の美とは、正にこのような美をさすのではないでしょうか。」(民藝392号/昭和60年8月号掲載)

柳宗理さんは「民藝」で培った技術や精神を、現代の技術や進歩とともに未来に活かしていく役割を彼自身のデザインで行っていこうとしていたといいます。手作りだけでは廃れ取り残されてしまう、良きものを現代の力とうまく調和させ、我々の生活、さらに未来の生活に根付かせていく。常に新しいものが生まれ、古いものは次々と廃れていく今の時代だからこそ、食だけに限らずもの作りをする立場にいる人達全てにこの精神を今一度振り返ってほしいと願います。

一流の職人が作りだす見事な食器、パティシエが生み出す宝石のようなデザート、デザイナーが手掛けた洗練されたパッケージ、などのように多才な才能を持つ人々によって作りだされる美しさはもちろん人々を惹き付ける魅力を多いにもっています。けれど、使う人の使い易さだけを考えに考え作られた道具から生まれる自然の美しさ、昔から伝わる作り方を忠実に守り丁寧に作られたお菓子の素朴な美しさなどは、一流の人々が生み出すものにも劣らない作り手の力の美しさを備え持っているのかもしれません。

中條さやか
柳宗理のスプーン:写真
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