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最注目「今月の逸品」日本・さしすせそばなしー醤油編

埼玉の甘露醤油

皆さんは甘露醤油というものをご存知でしょうか?醤油の種類で良く知られているのは、濃口醤油や淡口醤油ですが、埼玉にある坂巻醤油店では、再仕込醤油を甘露醤油という名前で売られています。ツンとした醤油の強さが濃口醤油とするならば、坂巻さんの甘露醤油は「しっとり、まったり」という表現が良く似合う柔らか、かつ、奥深い味の濃口醤油。すき焼きの時この醤油を使ってしまうと、これを手放せなくなること請け合いです。
そんなお肉にあう甘露醤油の魅力を探るため、今回は関東でも小麦生産がさかんな地域、埼玉県桶川に足を運んでみました。

JR高崎線桶川駅から車で走る事10分。穏やかな風景の一角をまがると、正門に置かれた大きな二つの醤油桶が来る人々を迎えてくれます。
素敵な笑顔の女性スタッフに案内いただいた工場内の部屋には、歴史を感じさせる木桶や麹蓋、升などが素敵にディスプレイされており、「おっ、これは店舗ディスプレイに使えそう」と目論みつつそわそわし始めたころ、優しい笑みを伴っていらしてくれたのが坂巻醤油の若き4代目小野剛志さん。
御年40歳。とてもその年齢に見えない若々しい小野さんはこの坂巻醤油の伝統を守るために縁をもらった婿養子。先ほど案内してくれた女性が奥様と聞き、ひたすら納得。美味しい醤油蔵に似合うお二人です。
小野さんに伺うと、「特に醤油屋になりたかったわけでもなく、好きになり結婚した人がたまたま醤油屋の娘だった」と自然体。現在坂巻醤油の醤油はこのご夫婦2人だけで作られており、麹作りや醤油の管理はご当主たった一人。「二人でも作っていける分量ぐらいで注文の対応が出来ていますから」という言葉からは、昔から長く付き合われているお客様が今も変わらず坂巻醤油の醤油を使い続けてくれたからこそという地道な足取りがうかがえました。
坂巻醤油店では、90年前から使われている杉桶で醤油の仕込みを行います。杉桶の数は全部で18。その内わけは8尺の杉桶が10と6尺5寸の杉桶が8つ。坂巻醤油店の顔である再仕込み醤油(甘露醤油)は、その小さめの6尺5寸の杉桶で育ちます。普通の濃口醤油は1年、そしてこの甘露醤油は2年。ゆっくりゆっくりと年月をかけて作られてゆくのです。 ここで、坂巻醤油の醤油作りを簡単に説明しておきましょう。
埼玉で採れた小麦を機械に1t入れ、目視で膨らみを調整しながら軽く炒り香りを上げます。そして蒸気や圧力など時期や大豆の状態によって加減しながら1晩蒸した大豆をこちらも1t、先程の小麦と混ぜ合わせ麦麹を作ります。次に麦麹は1昼夜風を送りながら風量と温度を調整しつつ混ぜ合わせ、醤油麹菌を増やします。この麹作り、今は機械作業ですが、微妙な調整は先代の醤油作りを見て教わってきた経験則で行われますが、機械といえども人間の微細ながらも細やかな手助けがあってこその醤油の味を引き出せるのです。出来上がった麦麹を杉桶にうつし、麦麹の3倍の塩水を加え、混ぜ合わせ熟成へと進み、濃口醤油は10tの仕込みから約7.2tの醤油が出来上がります。一方甘露醤油のほうは1tの麦麹に対して1年かけて出来た濃口醤油を3000ℓくわえ混ぜ合わせ、約2年かけて作り上げていきます。
この甘露醤油の特徴は、塩分が13%とふつうの濃口醤油より4%ほど低いこと。一般的にこの塩分であると熟成期間の間で腐ってしまいますが、麦麹と濃口醤油をあわせるために腐ることがないばかりではなく、醤油らしい旨味を感じさせる醤中窒素が高くなり、品質を守りつつ塩分は低いのにまろやかでコクのあるという、奇跡的な味わいが出来上がります。
この工程を説明してもらっている最中、謙虚にもこう語ってくれました。「私たちの醤油作りにワケはありません。というのも醤油は自分たちで勝手に育ってくれます。私たちは先代からの作り方を守り、工場内を綺麗にし、雑菌を減らす。いうならば醤油の手助けをしているだけなのです」と。

この坂巻醤油店、桶は古い杉桶ばかりですが、工場はとても近代的で衛生的な建物です。うかがうと、以前昔からあった工場は道路整備のために移転しなくてはならず2年前に止む無く移転。引っ越しに際し、大切な杉桶や醤油作りにかかせない麹の菌が住む木材などは、業者に頼めたものの、熟成している「もろみ」自体の引越はどこの業者も受け持ってもらえず、ご当主自ら何度も往復して「もろみ」を引越しさせたそうです。こうして無事に新しい工場に昔からの「坂巻醤油」がそっくり移動。大切な命が引き継がれた「醤油屋の引越」は、後に話してくれた「横着者が良い醤油を作るのです」という言葉がいかにも謙虚さゆえであることを裏付けます。

4代目小野さんは、実は寿司屋の息子さん。小田原駅前の「時よし」というお寿司屋で今もお父様が寿司を握っているそうです。 もちろん醤油は坂巻醤油の醤油だとか。「頼みもしないのに」と目を細めてポツリ。

甘露醤油は、肉も魚も「旨い」を連ね、やがて「人」をも熟させてゆくようです。


坂巻醤油店
URL:http://www.tamajo.jp/
超特選甘露醤油 360ml…577円
埼玉県桶川市大字川田谷5628-4
TEL.048-787-0340

小豆島の醤油:写真 小豆島の醤油:写真
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