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最注目「今月の逸品」日本・さしすせそばなしー味噌編

熟成味噌の代表格 仙臺みそ

日本で地名が付く味噌として、信州、津軽、甲府などと並び有名なものに、仙台みそがあります。味噌汁とするならば仙台みそ、と決めている方も多いほど、ファンが多い美味しい味噌です。今日は、この仙台みそについて話します。

「仙臺」これを常用漢字で書くと「仙台」です。
仙臺という地名は、元々千体仏を祀っていたお寺の跡地に建てたお城が、千代(ちよ)続くようにという想いで読みをかえ、「千代(せんだい)城」と名付けられたことに由来します。この千代から伊達政宗公が中国の七言律詩(しちごんりっし)『同題仙遊観』の冒頭句、「仙臺初見五城楼」をもとにして仙臺に文字を変えたといいます。中国では、昔から仙臺は「仙人の住む尊い場所」という意味があり、仙遊観という宮殿の見事さをたとえてこの歌に詠まれたとされています。また伊達政宗公は、仙臺みそを育てた殿様としても知られており、正に仙臺の父であると言えましょう。
伊達政宗公の時代といえば戦国の時代。戦うためには強い力と忍耐、持久力が必要。そのためには兵糧(戦陣食)はなによりも大事なものでありました。とくに米と味噌は兵糧の中では最も重要なもの。政宗公は軍用みそを自給しようと考え、城下に「御塩噌蔵」と呼ばれるみそ工場を設立。これが日本最初のみそ工場であり、仙臺みその始まりとも言われています。この「御塩噌蔵」から全て江戸に常勤する仙臺藩3000人にも送られ、まもなく大井の下屋敷に味噌蔵がつくられ味噌が作られるようになりました。仙臺みその独特の深みある味わいは江戸でも評判となり、伝手(つて)にたよって手に入れるなど、下屋敷は「味噌屋敷」とまで呼ばれるようになったといいます。「味噌屋敷」では味噌仲間を結成し、原料配合、品質吟味、価格、雇用などの掟を定め、長く明治始めまでの約300年間固くなに守られ、現代の仙臺みそに至ることになります。
この伝統ある仙臺みそを作っていらっしゃる味噌屋さんは、往時の約半分にまで減り宮城県内でおよそ30軒。この度はその中の1軒吉田屋さんを訪れました。

「寒いからさあ早くどうぞ、どうぞ。」と優しく部屋へと進めてくださった吉田屋12代目の吉田峰雄さん(65歳)は今も現役の味噌職人。そして隣には13代目となる息子さんとその奥様。もともと酒蔵業をされていた吉田家さん、今から380年前の五代目の際に味噌と醤油造りに専念されるようになり今に至るといいます。味噌のレシピはもちろん伊達の殿様の伝統ある配合を基本としたもの。現代にあわせ少し塩を減らしたものなど工夫をこらし「こし」「粒みそ」「淡」の3種類を作っておられます。仙臺みその特徴はなにより熟成により生まれる赤色と辛口。米みそのなかでも米麹の割合が低く、基準配合は大豆100に対して米麹はその50~45。仕込みから3~4年間寝かせて発酵させる長期熟成味噌の典型でもあります。この深い熟れによりそのまま食べることが出来るほど(別名なめみそとも言われる所以)豊かな味わいが仕上がります。吉田屋さんの配合は殿様基準より米麹がもう少し割合が高く、大豆に対しておよそ70。その結果より旨味が増し、正に芳醇な味わい。ほんの少しを口にすると、しっかりとした塩味と旨味が一気に広がり、余韻がしばらく消えません。
「こし」は昔ながらの技法でそのまま作り続けられた正当派仙臺味噌。
「粒みそ」は、素材の粒感を残した存在感が特徴のお味噌。
「淡」(あわ)は、あまり強い色調を好まない現代人に向けてアレンジした新しいお味噌です。どれも甲乙つけがたい味わいです。
個性豊かなこれらの仙臺味噌の旨みや独特の色を引き出すポイントとは、今でもスコップで行われる天地返し。発酵を促すために上を下に、下を上にとひっくり返された味噌は熟成している味噌は自ずとその旨味を増してゆきます。当然それは手作業で行います。「昔は2人で1トンの味噌を7、8分で終わらせてましたよ。」と、現在その作業を担当されている息子さんを横目で見ながら、やや自慢げの社長が印象的。伝統とはそういうコトのつながりでもあるようです。
それから大切な味づくりのポイントがもう一つ。味噌を寝かせるときに重ねる木板は、そこに住む微生物たちの住まいだとか。これが吉田屋の味を作っているのだといいます。

さてここでおもしろい話を吉田社長からうかがいました。
3~4年もの間長く熟成させる仙臺味噌。毎年仕込まれ熟成させておくため、どんどん増えてゆきます。当然そのためには、ある程度大きな味噌蔵が必要。裕福な農家では立派な味噌蔵で長期熟成した味噌を作りあげることが出来ましたが、小さな農家はそれほど大きな味噌蔵をもつことは難しいため、どうしても熟成が浅くなり、色味の薄い味噌しかできません。その若い味噌を食べることが恥ずかしく、長期熟成したように見せかけるため味噌に醤油をかけて見栄を張ったとか。当時をしのぶ楽しい逸話です。
こんな言葉も聞けました。
「ある程度のしょっぱさが割りが効く」。
ある程度強い塩分の味噌のほうが、味にメリハリがつき、使いやすいという表現。「旨い」の裏づけに塩分が重要であるという味付けのコツからみると、的を得た言葉と言えましょう。そういう意味で、玄人好みな味噌とも言えそうです。

ここで、吉田屋さんの仙臺味噌を使ったおすすめの料理をお教えしましょう。
発酵が進んだ「コシ」は、その長きにわたって馴染まされたために塩なれした状態となり、口にすると他のものより塩味が少し抑えられて感じます。よって、直接味噌を口にするような焼きおにぎりや、大根、蕪、人参、じゃがいもといった水分の多い具材をたっぷり使ったお味噌汁の引き締め役にも力を発揮。水っぽさを全く感じないお味噌汁が出来ます。脂が決め手の豚汁にも最適とか。
やや塩味が強く感じる「淡」は、その味をまろやかにする酒粕とあわせて魚を漬け込むと本来持っている旨味によって魚の旨みがひき立ち、酒粕と相性が折り重なって最高に美味!
「粒みそ」は、お砂糖とあわせて田楽にすると、淡泊な素材が引き立ち、印象深い料理になります。
是非お試しください。

東北で縁起の良い伝統玩具と言えばこけし。このこけしを素朴で可愛らしいモチーフとしてパッケージにしている仙臺みそですが、以前これを一度見直し、こけしを無しにして売り出したところ、お客様から大不評をかったそう。
魂の宿るモノの中に、どうやらラベルの中にも目を光らせる伴侶が居たようです。


吉田屋 マルヨシ印本場仙臺みそ こしみそ 1kgー490円
宮城県黒川郡大和町吉岡字下町25
URL:http://www.miso-shoyu.com

参考資料
「貯蔵に耐える芳香の仙台味噌」
「味噌沿革史」

京都の味噌屋の話「本田味噌」:写真 京都の味噌屋の話「本田味噌」:写真
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