このページの先頭です
  • キッチンエヌとは
  • 業務内容
  • シェフ中村 新
  • スタッフ紹介
  • 「今コレ!」
  • 業務実績・会社概要
  • 人材探し・橋渡し
ここから本文です
  • 勉強になる「今月の一軒」
  • 最注目「今月の逸品」
  • 今、このレシピ
  • 日本に学ぶ食の知恵「山を育て、野を耕し、海で貯える」

最注目「今月の逸品」日本・さしすせそばなしー味噌編

お肉に合う「さしすせそ」 八丁味噌(株式会社まるや八丁味

東海道五十三次。江戸は日本橋から数えて38番目にある岡崎宿。歴史に詳しい人なら徳川家康の生誕地として記憶に刻んでおられるところです。
この地に岡崎城があり、そこから八丁(約870m)以内で作られた豆味噌だけを「八丁味噌」と呼んでよいということになっている、由緒正しいお味噌を作り続けている屋号は、「まるや」と「カクキュー」の2つのみ。「え?もっとたくさん目にするよ」とおっしゃる方はくれぐれもご注意ください。それを名乗ることが出来るのは、この2ブランドだけなのです。言い換えると、それほど類似品が多いのは、八丁味噌にあやかりたい美味しさや品質がしっかりあるということです。
今回は、まるや八丁味噌をご紹介いたします。

味噌には用いる材料に合わせて大きく分けて3つの種類があります。米味噌、麦味噌、そして豆味噌。最も多くの地域で作られているのが米味噌で、九州全域と本州のごく一部に麦味噌。そして三河地域を中心とした豆味噌が続きます。
豆味噌の中でも八丁味噌は使う材料が実にシンプル。塩、麹、大豆、水だけで仕込み、二夏二冬(にかにとう)、つまり2年間熟成させて仕上げたもの。必然的にアミノ酸が褐変して深い茶色、いや黒に近い茶色へと変化したものが出荷されます。そう書くといとも簡単に思われますが、八丁味噌には独特の技法があり、それが故に何とも言えない美味しさを引き出されているといって過言ではありません。その技法を語る前に、歴史を守り続けるご当主をご紹介いたしましょう。
まるや八丁味噌のご当主は浅井信太郎さん。第一印象は、髭をたくわえていて全体的に日本離れしているなぁ、といったところ。よくお話しをうかがうとドイツに長く住まわれていたご経験があり、家業を継いだのはその後のことだとか。「なるほど」と思いながら聞き進めると、八丁味噌を世界に広げる取組をずっと続けていらっしゃることを知りました。
「世界のベジタリアンのために、美味しい調味料を提供したい」という動機です。これには当然ヨーロッパで生活されていたため、肩に力の入りすぎない経緯があられることは間違いありませんが、エコ&ベジという新しくもあり、現代食の本流でもあるコンセプト商品がこんなにも身近にあったのかということを再認識させられます。ただ知っておかねばならないのは、単に手前で作っているものがシンプル素材による美味しい味噌だからといった緩やかな動機ではありません。「世界に通じる力」がそこにあったからです。それは伝統や格式といったものと同時に、「旨味を増強する」匠たちとの総合力があっての賜物と言えましょう。

「矢作川」そして、「岡崎城」。これらは八丁味噌にとって重要な意味を持ちます。
まず矢作川。材料の運送ルートとしてこの川を使ったというのは予想しやすいのですが、もっと大切なものがあります。それは「河原の石」です。しかも矢作川にある石の中でも、表情豊かな石たちです。
「石に表情などあるのか」とお思いの方。是非一度、河原に行き、両手でやっと持てる位の石をいくつかご覧になって見てください。楽しくなるほど表情が違います。私の父は生前、日本庭園を造る仕事をしていました。庭の石組をしている際、いとも簡単にハンマーで石を割ります。これをマネしても素人には出来ない。専門家は石のクセも見抜くものだと感心した記憶が、まるやさんにうかがった時、鮮明によみがえりました。
この矢作川で集められた石たちが良い仕事をするのです。

ほの暗く、静かで堂々とした蔵の中に大きな杉桶。中にはしっかりと仕込まれた豆味噌。圧巻はその上に麻布を介して積み上げられた石の山。これこそが矢作川の石たちです。巧みに積み上げられた様は、まるでピラミッドのよう。
ひとつの桶に使われる石の数は大小あわせて700個ほどで、重さは約3トン。どれも矢作川から集められた「石の精鋭」たちです。長きにわたる経験で育まれた技を駆使して、まるやの石組み職人はひとつの桶に3時間かけて石を組み上げます。「石には相性があって、きちんと組み上げないと悪さをするのです」と職人さん。それはそうです。たくさんの石の下にあるのは、ある程度粘性があるとは言えども柔らかい味噌。バランス悪く積み上げれば偏ったり、崩れたりして中の味噌があふれてこようというもの。そうならないように、バラバラの石が一体化するように組み上げられるわけです。なぜ、これほど上手に石をあやつれるのだろうか・・・、という疑問がふつふつと湧いてきました。 そこに先ほどのキーワードがありました。八丁味噌に重要な意味を持つもう一つの要素、「岡崎城」がそれです。
岡崎城はもとより、幾多の城も基礎は石によって成り立ちますが、それら形作る石を加工する「城をつくるための石工」として唯一幕府から認定されていたのが、岡崎であったと言います。言い換えると「石工のマエストロ」が集う町それが岡崎だったのです。その技法が味噌つくりにも生かされたのは想像に難くなく、正に石を知る人々が作り上げた芸術的味噌、それが八丁味噌なのです。

組み上げた石たちは、桶の味噌に対して四方八方からバランスよく力をかけます。味噌は空気に触れて美味しくなり、片や、空気を嫌う菌が居て美味しくもなります。
石たちは桶隅々まで力を行きわたらせることにより、適度に全体を引き締めたり緩めたりして本来持っている味噌の力を充分に引き出しつつ、外気温との変化や湿度のバランスなどをコントロールしてくれる役割もあり、「生きている」という感覚さえ覚えます。もちろん、それをがっちりと下で受け止める桶の力強さも忘れてはなりません。

豆、麹、塩、水、石、桶、蔵、人・・・。
1つの漢字が重なりあう神秘的な歴史の味。八丁味噌が世界に打って出るだけの価値があるというワケは、オールメイドインジャパンという物凄さに裏付けされていたのです。

さて、おいしい八丁味噌を使った料理をご紹介しましょう。とても簡単。
「こんにゃくと豚肉の味噌煮」です。
臭みを抜いたこんにゃくは一口大にスプーンでちぎりましょう。豚肉は肩ロースが一番。3㎝角位に切ります。少しの昆布と日本酒、水、味醂、まるや八丁味噌、沖縄の黒糖を頃合いに混ぜ(少し全体に汁分が多いかな、と思う位)、全ての具材と混ぜ合わせ、出来れば圧力釜で20分、これが無い場合は蓋をしてじっくり1時間ほど煮上げてください。こんにゃくが肉の旨味と絡み合いつつ、引き締まった味噌の切れ味でこの上もない贅沢料理が完成します。

京都の味噌屋の話「本田味噌」:写真 京都の味噌屋の話「本田味噌」:写真
バックナンバー一覧