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日本に学ぶ食の知恵「山を育て、野を耕し、海で貯える」 vol. 01
限界集落その1

新しいコラムのスタートである。
テーマは日本に学ぶ食の知恵・「山を育て、野を耕し、海で貯える」。
日本人が古来より築いてきた「生きるために育んだ食の知恵」は、自然に寄り添いながら考案した「少しでも豊かになるように食べる工夫」だ。当コラムは、日本に生きる者として、美味しい地産品を紹介しつつ、現代社会がかかえる問題点について考えるものである。

限界集落(げんかいしゅうらく)。語調からして厳しさが伝わる四文字だ。
社会学者・大野晃氏が1991年に提唱した「人口の50%以上が65歳を超える地域」のことを指す。このような状況になると冠婚葬祭の継続、インフラなどの整備が行えなくなることによって、かつてより共同で営んできたことが出来なくなってしまい、いずれは消滅してしまう恐れがあるという地域である。

この言葉について、高知工科大学で地域振興をてがける特任教授・松崎了三氏は、「限界というのは暗い。いっそのことギリギリビレッジという方が明るい印象があり、暮す人々もなじみやすいだろう」とおっしゃる。明るくて良い人で終わりたいと願う松崎教授らしい。
松崎教授は、林業だけが取り柄であった馬路村を、柚子で日本一の村にまで成長させた貢献者の一人で、販促の技法だけではなく人柄も素晴らしい。この松崎教授を通じて高知県産品の中で「土佐文旦」、「生姜」、「茶」の拡販経路の支援を行っているが、仕事を通じ、これらの生産は限界集落の力なくしてはありえないことだと知った。林業をベースにかつてより生計を立ててきたが、その仕事だけで地域の若い力をひきとめることはできない。当然、都会へと人は流出してしまい、高齢者だけが残ってしまう。昔とは違い、食で窮することはなく、また予防医療も発達したために65歳以上でも十分に働けることはもちろんだが、人生の価値感を逸することのない強い精神をここの方々は備えていて、それこそが継続への力となっているのは間違いない。

さてこの限界集落の今後を考えるとき、このままの継続が良いのか、Uターン、Iターンが促進されることがみんなの幸せなのかという議論がある。この一点だけを考えるとおそらく当地の人々は「よそ者排除」で結論となろう。しかし、地球規模で考えると、山の治水能力や環境を高めてきた地域が消滅するというのは、決して良い結果をもたらさない。雨水を含みやすい山だからこそ、海に流れる川が豊かであり、魚も増える。手入れの不足した山は荒れて育つものも育たない。限界集落に住み続けてきた人々は、自然を守ることを約束してきたのだから、その後も山を育てる人、つまり後継者を育てなければならないはずである。だから、私たちは地域の生活を豊かにするという意識や大義名分でモノを消費することをやめよう。むしろ、強い体質の限界集落となるよう「ちょっと忙しい」という頃合いの量で仕事を増やしてあげるために、意識してそこの産物を選びたい。