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日本に学ぶ食の知恵「山を育て、野を耕し、海で貯える」 vol. 02
限界集落 その2

限界集落とは、そこに住む人の中で65歳以上の高齢者が50パーセントをこえる地域のことを指す。
その集落の多くは山間部、あるいは町から遠く離れた海沿いである。
今回ご紹介するのは、「ひがしやま」という干し芋を作り続けられる「自然との共生」だ。

高知県幡多郡大月町。東京からも、大阪からも、そして高知市からも大変遠い四国最西端の町である。主に漁業を中心とした産業で成り立つこの町に、古くから冬になると作られる食べ物がある。紅ハヤトというほんのり赤い果肉をもつさつま芋を水と共に煮てから干しあげた、いたってシンプルなおやつだ。
優しい真紅に色づいたひがしやまを口に含むと、ねっとりとした食感が歯に伝わり、ほのかな甘みに舌が占領される。素朴な旨味が実に美味しい。
こう書くと非常に簡単であるがその製造工程は、人が人を思いやる優しさで包まれたものであり、そこには自然と生きる人の知恵で満ち溢れているのだ。

その理由は画像と共にご理解いただきたい。

「ひがしやま」の生産地 高知県幡多郡大月町龍が迫地区。
四国最西端の町は、昔から鰤漁を中心とした漁業が盛んな地域。
北風が強く吹き付ける時期、
漁に出れない時期の保存食として作られていた。

「ひがしやま」とは、
干菓子と山があわさった言葉が語源という。

「ひがしやま」の材料は、紅ハヤトという甘味が強く穏やかな紅色が特徴のさつま芋。
秋に収穫した紅ハヤトは、床下に保管され、頃合いの乾燥状態にまで寝かされる。

皮を丁寧に剥き、3度洗い、水気を切るのが下準備。

ひがしやま作りの名人、山田さん。
年齢も深まり、漁業をやめ、専門に始めたのは平成3年から。

煮炊きに使う道具は、全てオリジナル。
息子さんが、お父さんのために作ったとか。

煮上がりは、甘い湯気でいっぱい4~5時間かけて、
ゆっくり煮上げた芋は、甘味にあふれ、マンゴーのよう。

煮汁は、自然な甘味と、土の香りが混ざり合い、冷えたからだにしみわたる。「旨い!」
何度か、蜜をかけつつ、 まるで赤ちゃんをあやすようにひとつずつ、またひとつずつ。
冷めないうちに取り出し、徐々に冷ましてゆく。
その間に、適度な水分が抜け扱いやすいかたさになってゆく。

粗熱がとれたところで、ひとつずつ、包丁で成形作業。
この作業には、「100均の文化包丁がよい」とのこと。これも知恵のうち。

頃合いの大きさとは、ちょうど手のひらに乗るくらい。
少し大きいものは、そっと切り分け、軽く握って幅をそろえ、
角をとりながら、優しい形に整えててゆく。
あせらず、丁寧に。そして淡々と・・・。素朴な手さばきが素晴らしい。

海風が吹き上げる崖の上に、干し棚を作り、
その上で何日間も頃合いになるまでゆっくりゆっくりと干しあげる。
ぼってりとした食感と、穏やかな甘味。冬の団欒、火鉢で炙ると笑顔がはじける。
これぞ素の食。

 

ここで学んだ、とても大切な事柄

暮しの中で、誰かのためならば、つらくても続けられる
誰のために仕事を続けるのか、続けられるのかの答
耐えるのではなく、耐えたいと思う姿のすごさ
寒風も行程の一つと思えば、感謝する

素朴とは、何も足せず、何も引けない事柄の表れ
どこにも外せる仕事はないが、困難な仕事はない
継続するには、頃合い(ほどほど感)が大切
民芸という姿の昇華

販売する人は、きちんと理解し、自分の感動を伝える
そのまま出せるから、ワケを語る
そのまま出せるから、素が伝わる

限界集落とは、人生の教科書なのかもしれない。