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最注目「今月の逸品」  vol. 14
日本・さしすせそばなしー味噌編

京都の味噌屋の話「西京味噌」

舞妓のごとき味噌

雑煮という食べ物は実に興味深いものがあります。地域や家によって様々な雑煮が存在し、出し汁、餅の形、具材どれ一つにとっても多くの種類があり、そしてその合わせ方も千差万別。仲間内で雑煮の話題をあげると「私のところではね・・・」と盛り上がったという経験は誰しもあるはずです。ただ他人の「雑煮自慢」。これは聞くには聞きますが、皆な、うちの雑煮が一番だと思って聞き流しているところが実に面白い。それほど地元愛によって支えられている食べ物と言ってよいでしょう。雑煮が独特な食べ物であるというのには、「食文化の異なる男女が、夫婦となって新たな食文化を形作ること」ことに因みます。たとえば、出身地が東京の男性と島根の女性が作り出す雑煮は「関東風山陰雑煮」とならざるを得ません。また、人々の交流が盛んな都会や大きな港周辺では両家のプライドを傷つけないようにと、元日は旦那さん、二日目は奥さん側のものを2種類使い分けているところも多く見かけます。これは日本人が最も日本の伝統を感じるお正月だからこそ残る、楽しい食文化です。
雑煮に欠かせない「さしすせそ」の醤油や味噌は具材と共にその土地柄を大きく反映します。中でも白味噌の代表である「西京味噌」は、京都というニュアンスを強く感じさせるため、何とも上品な印象。作られる雑煮も、甘く、優しく、そして穏やかな表情をつけてくれます。正月に合わせて今回は、和食料理人からも高い評価を得ている京都の味噌屋「西京味噌」の白味噌をご紹介いたしましょう。

西京味噌は全国に白味噌のよさを広める役割を担っていると自負していらっしゃる会社であり、味、品質ともにずっと変わらない「格」をもっておられ、正に京都の食物史そのものであります。
「白味噌は公家文化で生まれ育った味噌」
争うことのない平安の世の中で白味噌は、お雑煮だけではなく貴重な砂糖のかわりの甘みとして和菓子に使われていました。天保元年、丹波杜氏であった初代の丹波屋茂助が、禁裏御所(現在の京都御所)のご用命をうけ、宮中の料理用味噌を吟醸し、献上したのが西京味噌の始まりといいます。その後、宮中だけではなく茶会の席、京料理、京和菓子の世界などでも愛されてきた西京味噌は、歴史を重ねつつ京を代表する味噌屋としての道を歩んでゆきました。 さらに時代は流れ、明治維新、都が遷ると同じく、京都の老舗和菓子屋や老舗百貨店なども東京に移動。その結果として東でも使われるようになった京都の白味噌を西の京の味噌、つまり「西京味噌」と呼ばれることとなり、今日に至るといいます。
200年もの昔から、美を求め続ける京の地で、美しき和菓子や京料理に使われ続けてきた西京味噌。独特な滑らかさ、こだわりの旨味はもちろんのこと、美しい白い色、若々しい甘さ、そして併せ持つ透明感は、例えるなら「味噌の舞妓はん」。これは、白目大豆と歴史ある石臼のごとき製法で生まれるきめ細やかな製造技術によって生まれるものです。興味深いのは西京味噌が最も合うお出しは、鰹節もいりこも入らないシンプルな昆布だしだということ。ご存知のように鰹節は製造工程で「燻し」があります。また鉄分を多く含む素材のため空気と触れれば触れるほど褐変してゆき、どうしても醤油を介在とした味付けとなるのは仕方がありません。 仏事も多い京料理では野菜料理を手掛けることが多くなり、必然的に素材の色、香、そのものの旨味を生かすため、調味料は色のついたものを避けます。醤油は淡口、甘さはキャラメル状になりづらい味醂を砂糖の代わりに使うことで細やかさと料理の色気を誘いつつ、西京味噌で濃厚さを引き出します。メイラード反応(アミノ酸が熟成して茶色に変ってゆくこと)が強い赤味噌では、到底、職人が求める繊細な色合いは表現できません。公家文化と共に歩んだ料理に使われるこの味噌は、いわば「外食味噌」と言っても差し支えないでしょう。つまり、塩分中心の大衆食との大きな差こそが階級を伴う都文化そのもの。ここに合うお出しは昆布だけでなければならず、甘味より塩味を得意とする鰹だしでは力不足となるわけです。
京料理を食べに行くと様々な白味噌料理に出会います。春の木の芽和え、白身魚の西京漬けと甘くて穏やかな味わいは正に外食の味。特に京懐石で最初に出る椀物は、その店の実力を表わす大事な一品。ある旧正月のそれは、熱々の西京味噌仕立ての汁に柔らかく香り高い蕪に小さな焼き餅。軽やかな京人参短冊の上にうぐいす菜の緑が映え、さながら雪解けを待ちわびる人の心をくすぐります。非日常の上にある蒔絵のような甘美さを際立てる西京味噌は、やはり今も、昔も、「舞妓はん」なのです。

西京味噌さんにおいしい魚の西京漬けの作り方を教えて頂きました。
「お魚の切り身と同分量の西京味噌を使い、じっくりと冷蔵庫で2晩漬け込み、後は味噌を拭ってこんがり焼く。」
とても単純ですが、塩梅はこの「同分量」ということ。この料理を食べて「美味しい!」と感じるために必要なのは「熱々」。このバランスであれば魚に残る水分がほどよく旨味と重なり、濃度のある熱い温度を中心に貯えてくれます。ご飯によし、酒に良し、もちろん冷めても美味しく弁当にもよしの蔵元直伝の西京漬け、是非覚えておきましょう。

株式会社西京味噌
URL:http://www.e-miso.co.jp
西京白味噌「京丹波」300g-540円
〒602-0904  京都市上京区室町通一条上ル小島町540
TEL:075-441-1120(代)

本田味噌本店(関連会社)
URL:http://www.honda-miso.co.jp